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最高裁判所第三小法廷 昭和51年(あ)550号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人島秀一の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であり、同第二点は、憲法三二条、一四条違反をいう点もあるが、実質はすべて事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第三点は、憲法三一条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張であり、同第四点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、すべて刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(なお、原判示活性汚泥槽が労働安全衛生規則五三三条の「転落することにより火傷、窒息等の危険を及ぼすおそれのある煮沸槽、ホツパー、ピツト等」に含まれるとした原判断は、相当である。)。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(環昌一 天野武一 江里口清雄 髙辻正己 服部高顯)

弁護人島秀一の上告趣意

第一点、第二点 〈省略〉

第三点 原判決には憲法三一条に違反して不当に法令の解釈を拡張し構成要件に該当しない行為を処罰する所謂罪刑法定主義に違反する違法がある

即ち原判決は本件活性汚泥槽の設備は労働完全衛生規則第五三三条ピツト「等」の「等」に包含すると解して処罰している然れ共「等」は一種の白地規定で之を積極的に拡大解釈すべきでないことは罪刑法定主義の原則より当然のことで右は大傷窒息等の危険のある煮沸槽ホツペピツトに類する大工場鉱山等に於ける設備を前提とする例示的のものに類しなければならない殊にピツトとは穴窪のことで原判決摘示の通り(判決書四枚目裏)であるが本件槽は第一乃至第四槽を以て一個の槽となす広大なるプールに類するもので到底原判決例示の物件とは甚だしく態様を異にし勿論単なる穴や窪みではない転落したとしても火傷の虞なく又十分泳ぐことにより水による窒息は避けられるもので火傷窒息等の危険のないものであるのに輙く之を右「等」に包含して処罰するが如きは重大なる憲法三十一条に違反して構成要件を拡張するもので違憲である

第四点 〈省略〉

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